練習機の桜花K1の主翼は実戦機の桜花と違い金属製で、フラップが装備されています。
せっかくなのでフラップを開いた状態にしましょう。
まずキットの下面パーツをモールドに沿って切り離します。
切り離したフラップはプラの厚みがあるので0.3ミリプラ板に形を写し取り、切り抜きます。
切り離したフラップパーツをプラ板の上に瞬着で仮止めして形を写すと楽です。
フラップ内側に何もないはずがないので、適当にリブを入れます。
プラ板の細切りを左右大体同じ間隔で並べてしっかりと接着し、

持ち手に両面テープで固定してから、外側に向かってリブの背が低くなるように削って形を出します。

左が完成したフラップです。当て木に固定した粗めの番手で一気に削ると高さを揃えやすいです。
間隔や本数はわからないので適当ですが、チラッと見えるだけなのでこれで良しとします。

桜花は機体の各部を分業で生産していて、最終組み立てと検査を空技廠で行っていました。
桜花の胴体と推進器は茅ヶ崎製作所、木製主翼と尾翼は富士飛行機で、K1の金属製主翼は中島飛行機が生産を担当していたようです。
桜花の生産に参加した企業は小メーカーばかりなのに対して、金属主翼だけは中島が生産しているのが興味深いところですね。
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定石どおりコクピットからです。
ストレート組みするつもりでしたが、せっかくエッチングを買ったので使うことにしました。
座席を丸々作り直しますが、真鍮なので加工しやすく、曲げる部分にスジが入れてあるので組み立ては難しくありません。
K1も同時進行で座席に追加工作します。
こっちは桜花に使った残りのエッチングパーツを使うことにして、キットのパーツを加工しながら組むことに。
桜花とK1では座席の形が違い、K1では背負い式落下傘を収めるために座席の背が切りかかれています。背中の受けの部分は桜花の座席を組むとエッチングが余るのでエッチングを流用し、キットのプラパーツに軽め穴を開けています。
左が加工前(一部あたり用の穴を開けていますが)、右が加工後です。
桜花開発時には脱出用の装備として背負い式落下傘装備用の座席と風防開放装置が計画されていましたが、実装はされなかったようで、かわりに練習機のK1には装備されてたみたいです。桜花と座席が違うのはこのキットで知りました。

桜花の動力、四式一号噴進器二○型はスライド金型を使用して、開口部のふちも薄く仕上がっていて加工いらずです。この火薬ロケットは日本海軍の空母用カタパルトを葬った離艦促進用ロケットの流用です。
試製桜花には燃焼時間を半分の4.5秒にして小型化した一○型を両翼下に取り付け、尾部のものとあわせて5本のロケットを装備していましたが、実用機では尾部の3本だけとなりました。

K1と桜花の機首は似てるようでシルエットが大きく違います。
頭部大金物と呼ばれた1.2トンの半徹甲弾を積んだ桜花の機首は砲弾型に尖り、バラストの水タンクを積んだK1では胴体からそのまま延長されて丸く、円柱状です。
桜花には頭部大金物が再現されていますが、プラの成型上やっぱり少し小さいです。

自分的にはハセガワ32雷電より期待していたファインモールドの桜花です。
48の桜花は大昔にホークがキット化していましたが、オークションでもなかなか出品されず手に入らなかったのでホビーショウで発表されてからずっと楽しみにしていました。
ホークの桜花は後にツクダからも発売され、Me163と抱き合わせで販売されることもありましたね。桜花の開発経緯を知っていると桜花が本来装備したかった液体ロケット動力を装備したコメートとの抱き合わせは感慨深いです。
72でならばハセガワの一式陸攻24丁に付属の古いものが入手できました。48桜花は海外の簡易メーカー(AZモデルだったか)が出すという話もありましたがいまだ続報はなく、純然たる特攻機なので国内メーカーからはもう出ないのかなと思っていましたが、ファインモールドはやってくれました。さすが橘花(特攻機ですよ)や回天を出したところは違います。
そんなファインモールドの新キットですが、小型な機体なため部品も少なく運搬車も含めてランナーは三枚です。
この油圧ジャッキのついた運搬車も新資料に基づくもので、写真が出てきたのはここ最近のことです。キット代のうち500円分くらいは価値があります。せっかく立派な解説つけてるので説明書でもっとアピールすればいいのに。

別売りエッチングは座席を中心に照準環や運搬車の固定バンドなどとおまけのスパナ、挽き物のピトー管です。いつものことですがちょっと高いです。エッチングの材質を洋白から真鍮に変えてくれたのはうれしい変更です。
真鍮は洋白より柔らかく、反発が少ないので加工しやすいのです。磁気を帯びたピンセットにもくっつきませんし。

練習機型のK-1も同時発売され、こちらは練習機塗装のオレンジが目に痛い箱絵です。正直K-1まで出すのはびっくりしました。何枚か写真が残っていますが、よく細部の資料そろったものです。
それにしても切羽詰っていたとはいえ、これで滑空飛行一回で実戦投入というのはずいぶん乱暴な話です。

こっちは胴体側ランナーが丸々一枚新規で起こしてあり、運搬車は付属しません。ソリつけてたら台車に乗らないからなのでしょう。しかし桜花と値段が同じなので、こっちにもつけてて欲しかったです。
一式陸攻に搭載するときはあれを使ったはずでしょうから、ソリは取り外し式だったんじゃないかと思います。

桜花とK-1のデカールです。デカールは桜のマークだけでなく、注意書きまでしっかり入れてくれています。
製造番号らしい1022がこれしかないのは、写真で確認できるのが沖縄で鹵獲されたこの機体だけだからなんでしょうね。

資料としては今桜花を作るならこれははずせないでしょう。キットの解説も担当されてる加藤浩氏の『神雷部隊始末記』です。
実際に桜花を運用した721空生存者の証言を中心に日本側戦闘詳報と米軍記録を丁寧に調査編纂された労作です。N氏やW氏に時々見られる理解不足から来る非難の記述がなく読みやすいです。また掲載写真も珍しいものが多くカラー塗装図も入っていて機体の資料としても使えます。
有人滑空爆弾として色々と語られる桜花ですが、生きている人が計画整備運用していたということがよくわかるこの本は戦史ファンならずともぜひ読んでほしいです。
掲載されている神雷部隊署名帳は悲しく、なんともいえない気分になります。

より機体側のディティールを求めるならモデルアート別冊の『「秋水」と陸海軍のジェット、ロケット機』でしょう。図版は上述の『神雷部隊始末記』と重複してますが、こちらはエンジンジェット化した二二型の写真が多く写真も大きいので模型作りの資料にいいでしょう。

海外の特攻機研究本ですが日本人研究者と合同で翻訳本が出ました。目玉は特攻グライダー神龍と、開発中だった熱誘導式滑空爆弾各種ですが、戦後すぐに世界中に悪い意味で宣伝された桜花についても詳しいです。
桜花の記述は正確なのですが、困ったことにこの本は所々とんでもない勘違いがそのまま載ってて注意が必要です。その辺を織り込み済みで楽しめるマニア向けですね。値段も高いですし。

開発元の空技廠からみた桜花と当時の海軍軍令部の特攻構想を知るなら、下の学研ムック『海軍航空技術廠』と『大戦末期航空決戦兵器』の2冊が参考になります。桜花の記述は少ないですが『航空決戦兵器』のほうは特攻専用機材の整備計画である興国兵器計画(皇国にあらず)を詳しく知ることが出来ます。

こっちはちょっと入手が難しいですが、空技廠スタッフ自身が戦後すぐに記した日本海軍機解説が興味深く、当然桜花についても触れてある『航空技術の全貌(上)』です。K-1の珍しい写真が収録されています。
戦後は擁護されている技術者の考え方が時々うかがえて、オイオイと突っ込みを入れたくなったりします。
絶版ですが、画像と同じ新しい版のほうなら下巻とあわせて1万もあれば何とかなるでしょう。

内藤初穂の『桜花』もいい本らしいのですがこれは読んでません。同じ筆者の『海軍技術戦記』は読んだのですが桜花の記述あったかなぁ…。
次から製作編です。(Ju88は?)